求人票で「月給25万円」「固定残業代を含む」と書かれていると、ぱっと見では条件がよく見えます。ただ、固定残業代の求人票は、月給の総額だけで判断すると「思ったより基本給が低い」「残業しても追加で払われないと思っていた」「面接で聞きにくくて流してしまった」と後悔しやすい項目です。
固定残業代そのものは、すぐに危ない制度というわけではありません。大切なのは、求人票の中で基本給、固定残業代の金額、何時間分か、超過分の支払いが分かるかどうかです。
この記事では、仕事探しに慣れていない人向けに、固定残業代ありの求人票で見る順番、危ない記載の例、面接で聞く質問、スポットワーク・単発求人での注意点までまとめます。
固定残業代あり求人票の見方は月給総額だけで決めない
固定残業代ありの求人票を見るときは、最初に月給総額を見て、そのまま応募するかを決めないことが大切です。月給25万円と書かれていても、その中に固定残業代が含まれている場合、実際の基本給はもっと低いことがあります。
たとえば、月給25万円の内訳が「基本給20万円、固定残業代5万円」なのか、「基本給23万円、固定残業代2万円」なのかで、給与の見え方はかなり変わります。賞与や退職金、手当の計算で基本給が基準になる会社もあるため、総額だけでは判断できません。
京都労働局は、ハローワークに求人申込みをする場合、固定残業代を採用している事業所は固定残業代の労働時間数・金額等の計算方法、固定残業代を除外した基本給、超過分の追加支払いを明示する必要があると案内しています。
参照:京都労働局「事業主の方へ」
https://jsite.mhlw.go.jp/kyoto-roudoukyoku/yokuaru_goshitsumon/jigyounushi.html
固定残業代とは?残業代が出ない制度ではない
固定残業代とは、一定時間分の時間外労働、休日労働、深夜労働に対する割増賃金を、あらかじめ定額で支払う仕組みです。「定額残業代」「みなし残業代」と呼ばれることもあります。
ここで誤解しやすいのが、「固定残業代がある会社は、どれだけ残業しても残業代が出ない」という思い込みです。厚生労働省は、固定残業代を支払う場合でも、通常の労働時間の賃金に当たる部分と固定残業代を判別できるようにしたうえで、労働基準法で計算した割増賃金の額を下回るときは差額の支払いが必要だと説明しています。
つまり、固定残業代が設定されていても、設定された時間を超えて働いた分まで定額で済ませてよいわけではありません。求人票では「超過分は別途支給」「法定どおり追加支給」などの記載があるかを確認しましょう。
参照:厚生労働省「固定残業代を支払うこととすれば、残業や休日勤務をさせても別途に残業代を支払わなくてよいでしょうか?」
https://www.startup-roudou.mhlw.go.jp/qa/zigyonushi/chingin/q11.html
求人票で必ず見る5つの数字
固定残業代ありの求人票では、次の5つをセットで見ます。どれか1つでも分からない場合は、応募前や面接で確認したほうが安全です。
- 固定残業代を除いた基本給はいくらか
- 固定残業代はいくら支払われるのか
- 何時間分の残業代として計算されているのか
- 固定時間を超えた分は追加で支払われるのか
- 休日労働や深夜労働が含まれるのか
特に注意したいのは、「月給30万円(固定残業代含む)」のように、総額だけが書かれている求人です。基本給と固定残業代の内訳が分からないと、給与水準を正しく比べられません。
また、固定残業代の金額だけが書かれていて、何時間分なのかが書かれていない求人も注意が必要です。金額と時間数が分かってはじめて、その条件が自分に合うかを判断しやすくなります。
厚生労働省の「確かめよう労働条件」でも、基本給の中に割増賃金を含める場合には、割増賃金相当部分とそれ以外の賃金部分を明確に区別する必要があると説明されています。
参照:厚生労働省「基本給に含めた割増賃金って何?」
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/qa/roudousya/chingin/q11.html
固定残業時間が長い求人で確認したいこと
固定残業時間が20時間、30時間、45時間などと書かれている場合は、その時間数が何を意味するのかを確認します。固定残業時間は、必ずしも毎月その時間だけ残業するという意味ではありません。しかし、固定残業時間が長い求人では、残業が多い職場なのか、繁忙期にどのくらい増えるのかを聞いておきたいところです。
厚生労働省は、時間外労働の上限について、原則として月45時間・年360時間以内と案内しています。固定残業時間が45時間に近い場合や、休日・深夜の扱いまで含まれている場合は、働き方として無理がないか慎重に見ましょう。
見るべきなのは「固定残業時間が長いから即NG」ではなく、実際の残業時間、超過分の支払い、繁忙期、休日対応、36協定の有無などを説明してもらえるかです。説明があいまいな求人は、入社後のズレにつながりやすくなります。
参照:厚生労働省「時間外・休日労働と割増賃金」
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/study/roudousya_jikangai.html
危ない求人票に見えやすい表記
固定残業代ありの求人で、次のような表記がある場合は、応募前に確認したほうがよいです。すべてがブラック求人という意味ではありませんが、条件が不透明なまま応募すると、面接や入社後に困りやすくなります。
慎重に確認したい表記
- 月給〇万円、固定残業代含む、とだけ書かれている
- 基本給がいくらか分からない
- 固定残業代が何時間分か分からない
- 超過分を追加で支給する記載がない
- 固定残業代に休日労働や深夜労働が含まれるか不明
- 実際の月平均残業時間が書かれていない
- 面接で聞いても「人によります」としか言われない
特に「残業代込みだから追加はありません」と説明された場合は注意が必要です。固定残業代があっても、固定時間を超えた残業や、法定の計算額に足りない分まで支払わなくてよいわけではありません。
スポットワーク・単発求人で固定残業代を見る場面
スポットワークや単発求人では、1日数時間だけ働く仕事が多いため、固定残業代という形で見る機会は正社員求人ほど多くありません。ただし、日給制や業務時間が長い単発求人では、日給の中に手当や割増分が含まれているように見えるケースがあります。
スポットワークでは、勤務時間、休憩、集合場所、報酬額、交通費、キャンセル時の扱いを応募前に確認しましょう。もし「この日給には残業代も含まれます」といった説明がある場合は、何時間分なのか、超えた場合の支払いはどうなるのかを確認します。
厚生労働省は、スポットワークを短時間・単発の就労を内容とする雇用契約のもとで働くことと説明しています。短時間の仕事でも、労働条件はあいまいにしないことが大切です。
参照:厚生労働省「いわゆる『スポットワーク』の留意事項等」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_59321.html
内定前に労働条件通知書で確認すること
求人票で条件を確認しても、最後は内定時や入社前に労働条件通知書で確認します。求人票は応募前の情報であり、実際に働く条件は労働条件通知書や雇用契約書で確認するのが基本です。
厚生労働省は、労働契約を結ぶときに、契約期間、就業場所、業務内容、労働時間、賃金などの労働条件を明示する必要があると説明しています。賃金の決定・計算・支払方法、締切日、支払時期も確認したい項目です。
固定残業代がある場合は、労働条件通知書でも基本給と固定残業代の区分、時間数、超過分の支払いが分かるかを見ましょう。求人票と労働条件通知書で内容が違う場合は、その理由を確認してから承諾することが大切です。
参照:厚生労働省「採用時にはどのような労働条件が明示されるのでしょうか?」
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/qa/roudousya/koyou/q1.html
面接で聞きたい質問テンプレ
固定残業代について質問するのは、失礼ではありません。むしろ、働き始めてから困らないための大事な確認です。聞き方に迷う場合は、次のように落ち着いた表現にすると聞きやすくなります。
面接で使える質問例
- 固定残業代は何時間分として計算されていますか
- 固定残業代を除いた基本給はいくらでしょうか
- 固定時間を超えた場合は、追加で支給されますか
- 実際の月平均残業時間はどのくらいですか
- 繁忙期は何月ごろで、残業時間はどの程度増えますか
- 休日労働や深夜労働がある場合の扱いを教えてください
- 労働条件通知書で内訳を確認できますか
ポイントは、責めるように聞くのではなく、求人票の内容を確認する形で聞くことです。きちんと説明してくれる会社なら、給与条件の質問にも答えてくれるはずです。逆に、質問を嫌がる、説明が毎回変わる、書面で確認できない場合は慎重に判断しましょう。
まとめ
固定残業代ありの求人票は、月給総額だけで決めないことが大切です。まず、基本給、固定残業代の金額、何時間分か、超過分の追加支払いを確認しましょう。
固定残業代は、それ自体がすぐに悪い制度というわけではありません。ただし、内訳が分からない、超過分の支払いが書かれていない、固定残業時間が長いのに実態を説明してもらえない求人は注意が必要です。
応募前は求人票で確認し、面接では質問し、内定前には労働条件通知書で確認する。この順番を守るだけで、入社後の「こんなはずじゃなかった」をかなり減らせます。


